――米国で公衆衛生学を学び、ECFMGを取得、ボルチモアからホノルルへ。

鹿角:世界、特に途上国の課題解決にむけて公衆衛生学、国際保健政策を体系的に勉強したいと思い、ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院に進学しました。続いてハワイ大学併設のシンクタンクでアメリカと日本を含むアジア太平洋地域の諸問題解決のために若手を集めたアジア太平洋リーダーシッププログラムに参加し、その間に米国医師資格も取得しました。
米国医師資格取得には幾つかのStepがあり、Step 1(基礎医学9時間の試験)については、医学部5年生時、オハイオ州立大で実習する前に取得していました。アメリカでの実習は医学生でも患者さんの診察等含め、責任範囲が広く、とてもいい経験になりました。 Step 2は臨床医学8時間の試験 (Clinical Knowledge: CK)と模擬患者さんの診察、鑑別診断、レポートを1日がかりで仕上げる試験(Clinical Skills: CS)が別々にあり、これらに合格し米国医師資格(Educational Commission for Foreign Medical Graduates: ECFMG)が与えられました。

――海外で就職するために必要なこと。

鹿角:日本で「コネ」というとネガティブなイメージを伴う場合がありますが、国際機関はじめ、海外での就職活動にはコネクションが大きくものをいうように感じます。人とのつながりをつくる、私の場合ですと、米国東海岸に位置するボルチモアにいた時、比較的近距離にあるワシントンDCで開催される会議で興味があるものには頻繁に参加しました。せっかく行くのですから、積極的に多くの方に声をかけ、「インターンシップ、仕事等何かよい機会はないか。」「こんなことをやりたいと考えている。」と伝えるようにしました。もちろんすぐには答えをいただけません。「考えておくね。」と言われるのがせいぜいですが、忘れたころに連絡がくるのです。ホノルルに行って、さあ次に何をしようかと思っていたとき、半年以上前に会議でお会いした方から、「今度日本と世銀で共同研究プロジェクトを始める。興味があればアプライしてみたら。」とお声をかけていただきました。国際機関において、採用側が「この人なら大丈夫、やってくれる。」という人をあらかじめ見当つけるのはある意味理にかなっているかなと思います。世銀―日本政府間の共同研究に携わり、日本の各省庁間の調整や国際機関における意思決定プロセス等、医師として医療現場にいた時とは全く違う貴重な経験を積むことができました。

――GHIT Fund立ち上げに関わる。そして後輩たちに期待すること。

南米ペルーでの臨床試験視察、現地研究者と(2015年)
南米ペルーでの臨床試験視察、現地研究者と(2015年)

伊原:GHIT Fund設立の初代CEOスリングスビー氏には彼がまだ製薬会社にいた時に、世銀の友人を介して紹介されました。日本発の国際的な官民ファンド、国やセクターの枠を超えてパートナーシップを組み、グローバルヘルスの課題に取り組むという構想を彼が練っているところでした。「大地の子」以来、国際社会の中で日本の強みを最大限生かし、日本のためだけでなく国際社会のためになることをしたいというのが私の夢でした。彼の構想はまさに私の関心に合致するものでした。グローバルヘルス領域での日本の強み、すなわち製薬企業、研究機関、大学がもつノウハウを最大限活かす。まだマーケットがない、利益にならない分野において、新たな治療薬、ワクチン、診断技術の開発に向け日本のイノベーションを活かし多種多様なステークホルダーとパートナーシップを構築することでインパクトをもたらす。GHIT Fundにおいては、投資戦略とビジネスディ・ベロップメントを担当しており、日本と海外両方のアカデミア、研究機関、製薬企業、あるいは国際機関等、さまざまな分野の専門家の方々と協議を重ねながら、感染症に対する新薬開発に向けたパートナーシップ推進に関わることに、大変やりがいを感じています。いつもワクワクした気持ちで日々仕事に向かっています。
また、母校の大学3年生(医学部1年目)の授業はじめ、大学・大学院にてお話しさせて頂く機会もあります。どんな人にもそれぞれの活躍の場があるはずであり、自分自身がどういった瞬間にうれしい、楽しい、ワクワクすると感じられるのか、ポジティブな意味で「感情的」になれる瞬間、感性を大切にしてほしいと思います。「レールから外れることに対する恐怖心があって、なかなか挑戦できない。」と聞くことが比較的よくあるのですが、それは日本社会にとっての損失でもあると思っており「外れること、失敗すること」を恐れず、さまざまなことにチャレンジしてほしいと思います。

r4_katuno_2.png
G20 Health and Development Partnership Forumに出席(2017年ベルリン)

インタビュアー 清水眞理子